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歌夜は良く話し愛嬌も良い。喜怒哀楽を隠す事なく、表情がころころと変わる。凪の両親からも、実の娘のように可愛がられていた。
身の丈は凪よりも頭一つ分は低い。
藤色の小袖を気に入っているらしく、それが良く似合っている。
最近は子供の頃のように一緒に遊ばなくなってしまった。お互いに齢が十五を超えてしまった事もあるのだろう。
「今夜はもう戻るかな」
凪は雨竜島に向かって舟を漕ぎ始めた。
島には小高い丘が幾つもあり、いずれも樹木が生い茂っている。その凹凸のある稜線が満月の光ではっきりと浮かんでいた。
「波も高くないし穏やかな夜だ」凪は淡々と舟を漕ぎ、島に近づいていく。「もう少し獲れてもよいだろうに」
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