1人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうやら失敗したな」
言ってからアハハと笑う怪物。
うん、この落ちつきぶりは師匠でしかあり得ない。
「あ、あの、じゃあ、元に戻るには?」
俺はおそるおそる尋ねた。
「こんなこともあろうかと解毒剤を用意してある」
師匠は得意げに触手を伸ばし、薬品棚へ。
器用に目的のビンに触手を巻きつけ。
そのままビンは砕け散った。
「予備は?」
いやな予感がするが、俺はいちおう尋ねた。
師匠はしばらく棚を見つめていたが、
「ないな。新しく作らないと」
いそいそと移動し、その辺にあったキノコやら草やらを釜に放り込み、中火にかける。
大丈夫か、そんな適当で。
もくもくとかき混ぜる師匠。
大丈夫なんだろう、たぶん。
俺は床の掃除をすることにした。
しばらくして、海鮮の何かをあぶるような香ばしい匂いが漂ってきた。一杯飲みたい。
同時に起こる、絹を裂くような悲鳴。
「ミーちゃん、食べちゃダメ! 腰が抜けちゃう!!」
師匠がウネウネのたうちまわっていた。
触手の一部が火に近づきすぎて焦げながら干からびている。匂いの正体はコレか。
それを師匠の飼い猫がハミハミしている。
だからネコを飼うなとあれほど、
じゃなくて。
そう、ネコにイカを与えちゃダメ、
でもなく。
ネコが異形になっちゃう?
でもないような。
とにかく、師匠の危機感がズレてるのはわかった。
このグダグダな状況を解決できるのは俺しかいない(消去法で)。
最初のコメントを投稿しよう!