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翌日、部活から帰ると
弾んだ声のお母さんが出迎えてくれた。
久しぶりのお母さんの
「おかえりなさい」が嬉しいのと
昨日から続く モヤモヤした気持ちが
ごっちゃになって
あんまり お母さんの顔が見れなかった。
それでも お母さんにゆっくりしてほしくて
お手伝いをしてみたり。
変な距離感になっちゃってる自覚はあるけど
うまく取り繕うことも出来なくて
自己嫌悪したり。
そんな日が数日続いて
春休み最後の日。
明日が始業式だから
式やクラス発表の準備があるということで
どの部も 午後練はナシだった。
午前練の最後に
ミーティングをして 楽器を片付けた後は
全員で 校内の全教室の掃除をするのが
吹奏楽部の恒例行事。
サックスパートの担当は
新2年生の教室。
『2人ずつに分かれて やるよ!
まだ部活してる部もあるから、
そこは後回しにするとか
臨機応変に動いて!』
パートリーダーがテキパキと分担を
指示していく。
私は 都築と一緒。
2階の廊下の掃き掃除と窓拭き担当になった。
サイレント清掃を推進してるこの学校は
掃除の時間は一切おしゃべりせずに
黙々と作業する。
シーンとした中、箒の音や水音に混ざって
ある教室の中から声が漏れていた。
ここ、軽音部が使ってる教室だよね。
まだ、部活中かな?
ドアの窓からそっと中を覗く。
そこにいる人をみて 手が止まってしまった。
女子生徒と 奈央が
机を挟んで向かい合い
仲良さげに 2人で 何か話して笑ってる。
……奈央が 女子とそんな顔して話すの
めずらしー。
あ!
奈央と目があって 慌てて目を逸らした。
ドアから一歩ずれて
ごまかすように 窓を拭き拭きしてると
ガラッとドアが開いて
出てきた奈央とまた目が合い
反射的に 逸らしてしまった。
『さく、今日 もう終わりじゃん?』
『ん。掃除終わったら解散。』
『帰り、どっか寄る?
一緒に 帰ろう。』
『………。』
『どした?』
口を開きかけたと同時に
教室の中から「奈央くーん!」って
奈央を呼ぶ声がして
奈央が教室の方を向いた。
咄嗟に奈央のポロシャツの裾を掴んでた。
『……一緒に帰る。』
『ん。わかった。
んじゃ いつもンとこで 待ってるから。』
奈央と約束して ボーッとしてたら
都築に 「手、うごかせよー。」って
小突かれてしまった。
ほんとだ。
掃除終わらそ。
全部終わらせて音楽室に荷物を取りに行く。
もう既に終わってた羽奈たちが
私のカバンや楽器を持って待ってくれてた。
奈央も一緒に帰るって伝えると
羽奈には「私、今日レッスンあるから寄り道はムリだわ。奈央は今日 ヒマだから。」って言われた。
それから、「私もいた方が話しやすい?奈央だけでもいい?」って聞いてくれて
「話聞いて。」とか
まだ何にも言ってなかったのに
2人で心配してくれてるのがヒシヒシ伝わる。
『もー、羽奈たち大好き。』
抱きついたら
羽奈は
よしよしって
私の後頭部をポンポンして、
「レッスン終わったら連絡するからね。」と言ってくれた。
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