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週明けの 月曜日。 朝から夕方まで 部活の日。 お昼休憩で お弁当を食べ終えてすぐに パート毎に分かれて 午後の練習が始まる。 「じゃあねー!」と 自分の楽器を持って移動する羽奈を掴まえた。 『羽奈ちゃん。』 『うん? そう呼ぶ時は何かお願いがあるのね?(笑) なぁに?』 『今日、部活終わったら 一緒にごはん食べて帰ろ?』 羽奈は、 「頻繁に外食して帰ると怒られるんだから。 ママに怒られたら 咲良がーって言うからね!」と 言いながらも 家に連絡して了解を取ってくれた。 部活のみんなと駅でバイバイして 羽奈と2人で 近くの フードコートへ。 お互い食べたいものを購入して 席につくと、すぐに羽奈から 質問された。 『土曜日に 本当のママと ケンカして帰って。 帰ってからは おじちゃん&郁ちゃんともケンカしたんでしょ? LINEでそれだけ言ってあとは んー、大丈夫ー。ばっかりじゃ 何もわかんないし すっごい心配したんだからね! 1から説明してよ。』 ……部屋にこもってる間、 誰かに聞いて欲しくて 羽奈にLINEしたけど、 上手く説明出来ずに 中途半端な相談になっちゃってた。 私は そのことを謝り あの日あったことを 羽奈に 話した。 『えー……。 おじちゃん達、2人で外食してたとしてさぁ。 それは 別に良くない? だって 咲良は ホントなら その日は帰らない予定だったんでしょ?』 『うん。 しかもね ママから 誘われてこの日、 泊まりに行くことにしたから!って お母さんに言った時ね、お母さん、変な顔したの。 それって今考えれば、お父さんの誕生日だから 外食しようって言ってた日だったからなんだよね。』 『つまり、咲良が おじちゃん達との約束を忘れてて ダブルブッキングだったってこと?』 うん、と頷くと 「それは咲良が悪いわー。」と呆れられた。 『それに、お誕生日の食事は3人で別の日にって その日は 2人で ラーメン食べて来ただけだったらしい。』 『あーあ。勘違いだったのかぁ。 今日まだ気まずくて 帰りたくないの?』 『ううん。もう気まずくはない。 お母さんって こういう時、絶対放置してくれないじゃん?』 『あー(笑)。 郁ちゃんは そのままにはしないね。 じゃ、仲直りは済んでるの?』 あの日、 夜中の3時くらいだったかな。 リビングの気配がなくなって随分経ってから 飲み物を取りに 行くと 「お腹すいてない?」って言いながら お母さんが 起きて来た。 いらないって言う隙もなく すぐコンロの火を点け、 手際よく 私の席に 食事が準備されるのを 私は 泣きすぎた頭で ただ ぼーっと見ていた。 「食べれる分だけでいいよ? はい、どうぞ。」 お母さんは 椅子をひき、私を座らせると スプーンを手渡してくれた。 目の前で 温かな湯気と良い香りのシチューと ふわふわのパンと 彩り良いサラダが 忘れていた空腹を思い出させる。 『いただきます……。』 ひとくち食べると お母さんの優しさが身体中に広がった気がした。 『……起きててくれたの?』 『ううん。休んでたよ。』 私は こんな時でも 「ゴメンなさい」が言えない。 お母さんに酷いことしたから謝らなきゃって 頭では理解してるのに。 でも お母さんは そんな私に 「ごめんなさいは?」って言ったこと無いかも。 それ以前に、お母さんが 先に謝ってくれる。 この日も そうだった。 『ごめんね。 咲良が落ち着いてから ちゃんと お話を聞きに行けば良かったね。』 『……うん。』 『今日はもう遅いし また 話したくなったら 教えてね。』 いつも通りの柔らかい笑顔でそう言い 「おやすみなさい」って お母さんは 部屋に戻って行った。
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