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夏休み中も
二学期が始まってからも
ママからの連絡は全くなかった。
お父さんが 何かしら連絡したのか
それとも 普通に放置なのか 知らないけど。
時々 頭を過る “原風景”のことを
何度も何度も 考える。
けれど いつのことなのか
そこに居るのは 誰なのか わからないまま。
意識を集中させてみる。
ソコにむかって 潜るような感覚。
……私、泣いてるけど ホッとしてる、のかな。
「遅く………ごめんね。」
「気ををつけて……ってね。」
あーー。これ、何の場面なんだろう?
家ではない……気がする。
『咲良!』
登校中、横断歩道の直前で 肩を掴まれた。
『え?』
『え?じゃない。もう赤。』
早朝に登校する人の波にのって
考え事をしながら歩いていた私は
信号機を全く見ていなかった。
『ありがと。
奈央、今日レッスンなの?』
背負っているコントラバスが
奈央の左肩上から出ているのを指さしながら聞く。
『嫌だよ、なんで学祭の後でレッスン(笑)
バンドの助っ人頼まれてるから。』
『えーっ!ステージ 出るの?!
観る!』
『吹部より前だから、多分ムリじゃね?
プログラム5番。』
『なんで教えてくれなかったのー!
っていうか 昨日のリハの時、居た?
えー、みたい。行けるかなぁ。』
『昨日も居たよ。
ベースが怪我したから
端っこの方で 補助。
ほぼ練習してないから、今から特訓。』
『ちょっと、お母さんにLINEする。
絶対観たいっていうよ。
撮影しといてもらお。』
『お。今日、郁ちゃん来る予定?』
『うん。お父さんも。
って、のんびり歩いてる場合じゃなかった!
特訓がんばってね!』
奈央にバイバイして 音楽室に急ぐ。
お母さんからは
「奈央ちゃんのライブもちゃんと撮影するね」って返信がきた。
吹奏楽部の準備やその他色々で
結局、
私は奈央のステージを 観ることができなかった。
吹奏楽部のステージの時、
私は 今までで 1番 っていうくらい
沢山 ミスをした。
途中からは 自信なさげな演奏しか出来なかった。
気持ちが焦って 指がすべる。
いつもなら 続くはずの
ロングトーンが 切れちゃう。
……あんなに練習したのに。悔しい。
一緒に演奏してるみんなに申し訳ない。
そんな気持ちでいっぱいだった。
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