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演奏後、
音楽室のホワイトボードに書いてあった
部長からの指示通りに動く。
……1年は 楽器を片付けて
音楽室をミーティング仕様にする、だ。
走らないギリギリの早歩きで
音楽室へ戻ると、
テンション高く話しかけられた。
『咲良のご両親 来てたね〜!』
『……わからなかった。』
客席見てる余裕なんて なかったもん。
『えー!
咲良もイケメン顔で父似だと思ってたけど
お母さんにも似てるね!』
『……似てるわけない。』
『え?』
『……似てるわけないでしょ。
ホントのお母さんじゃないもん!』
シーンとした音楽室の静寂を破ったのは
奈央の声だった。
『さく。』声のする方に 顔を向けると
そこには 声の主の 奈央と
それから 両親が 立っていた。
……聞かれた!
お母さんの顔をみて そう思った瞬間、
私は 自分の楽器を
近くにいた羽奈に押し付けるように渡し
走って逃げた。
「どこにいる?」
スマホの画面上部に表示されてるのは
奈央からの LINE。
「階段」
「どこのw」
「B塔北側」
「何階?」
その答えを打つ前に
足音と「みっけ。」って声がした。
ダダダっと階段を駆け登り、
ドサッと荷物を置き隣に座った奈央は、
ん。と 飲み物を くれた。
「ありがと」
『LINEかい(笑)。喋れよ。
ま、いいけど。』
ストローをさし飲んでいると
視線を感じた。
『なに?』
『……泣いてる?』
『泣いてない。』
顔をじーっと見られて
照れ隠しに ことばがきつくなる。
奈央は そんなこと気にする様子もなく
『ふーん。郁ちゃんから伝言。
“お疲れさま。駅までお迎えに行くから、
打ち上げ終わったら連絡してね”だって。』
……あれ。めっちゃ普通。
聞こえてなかったのかな。
『ばっちり聞こえてたと思うぞ。』
『!人の考えてること 読むのやめてよ!』
『最近は 羽奈より
さくの方がわかりやすいからな(笑)。』
……あーあ。
なんであんなこと言っちゃうかなぁ、私。
このフルーツオレ 温くて 甘すぎ。
『いま、私は 何を 考えてるでしょう。』
『羽奈みたいに 単純じゃない!』
『ぶっぶー(笑)
羽奈に 殴られるよ?』
他愛ない会話で
トゲトゲしていた気持ちが
すこーしだけ まぁるくなった気がした。
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