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『ずーっと 反省してたの? 打ち上げ、楽しめなかったんじゃない?』 お母さんの言葉に 余計に涙が止まらなくなる。 もう一度 ゴメンナサイを言おうと 顔を上げると お母さんは すごく優しい表情で私を見ながら 「ごめんね。ありがとう。」と言った。 お母さんはいつもそう。 ねぇ、どうして? こんなに 心の中と 裏腹な行動ばっかり取っちゃう私なのに いつでも 大切そうに 真っ直ぐ見つめてくれるの? 私のこと 愛おしいって思ってくれてるのが ホントに伝わってくる。 実の娘じゃないのに。 あ。また。 “実の娘じゃない”って 自分の心の中の言葉に ぐさりと 傷つく。 俯いていると 車を停車させた お母さんは 言った。 『私が お母さんなのが イヤだとか 私に似てるって言われたのが イヤ。 っていう意味じゃないでしょ?』 それを肯定したくて 何度も頷く私に お母さんは 「知ってる。 だって咲良のお母さんだもん。 まだ新米だけどね。」と こちらの気が抜けるほど 可愛く笑っていた。 うん、って私が頷くと お母さんは ホッとしてた気がする。 ……? どうして ホッとしてるんだろう? その答えは すぐにわかった。 帰宅して すぐ。 「疲れたでしょ? お風呂いってくる?」と お母さんに、勧められ浴室へ直行した。 ……さっきまで泣いてた顔を お父さんに見られないようにしてくれたのかな。 あ、お風呂で使うヘアクリップ 部屋に置きっぱなしだ。 アレがないと 困るなー。取りに上がろ。 二階へ上がる階段の横にある リビングのドアの前を通った時、 お父さんとお母さんの声が聞こえてきた。 「咲良が」って聞こえ反射的に 足を止め 息を潜め 耳を澄ませる。 『咲良、私に迎えに来てって言ってくれたでしょ。 それだけでも 仲直りっていうか そうしようと思ってくれてるんだって それで十分って思ってたのね。 でも咲良は 私以上に今日のこと気にしてて なんとかしなきゃって思ってたんだなって 私も すごく 反省したの。』 『郁ちゃんは どこ 反省すんの?(笑)』 『私は いつも通りすることで 大丈夫だよって 伝わるって考えてる部分が大きいんだけどね。 咲良が その話題について 話したいことがあるんだとしたら こちらが全く触れないのも 言い出しにくいだろうなーって。 何度か 飲み込ませちゃってたかも。 ちゃんと お話しするのって 大切だね。』 『あー、なるほどな。 でも、反抗期っぽいときもあるじゃん。 ああいうときは スルーでいいと思うけど。』 『んー。 反抗期かなぁ。 それだけ気を使わずに 気持ちを出してくれてるのなら それはそれで嬉しい。 けど、ハルくんに対しては そうかもしれないけど 私には まだまだ遠慮してくれてるよ? だからね、時々出ちゃう 強い言葉も 咲良は 意図して使ってないっていうか ついつい 出ちゃった、って感じだもん。』 『それわかる。 しまった!って顔、するもんな(笑)。』 『でもね、今日、車でお話ししてる時に “私、咲良のお母さんだから ”って言ったら 咲良、頷いてくれたの。 ちょっとドキドキしながらだったから すっごく嬉しかった。』 『だから そんな 機嫌いいのか(笑)。』 『ちょっとずつ だけど確実に 家族になってる♪って嬉しくって。 自信持っちゃった。』 ……知らなかった。 お母さんも 私と 同じなんだ。 これ言ってもいいかな、って考えたり 自信がない時も あるってことかな。 私は 両親に気付かれないように そっと 浴室へ戻った。 温かいお湯につかりながら もう絶対に 感情的になって 爆発しないぞ。 謝らなきゃいけないようなことをしない。 そう気をつけようと 心に誓った。 だって ああいう 自分で自分を止められない 爆発してる時の自分は 大っキライだから。 ……それにしても。 お父さんと お母さんって いつでも 仲良しで ケンカしてるところなんて 見たことない。 え。……あの2人。ケンカするのかな。
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