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下を向いてシクシクシク。
……そろそろ何か言ってくれると思うんだけどなー。
そんなに話したくないのかな。
このまま教えてくれないなら
ひとまず羽奈のところに家出しよ。
部活の準備が必要か。
制服も持ってって……。
『そうだよな。不安にさせたな。
ごめん。』
あ。 話してくれそう。
シクシク、うんうん。
ゆっくり顔を上げると
お父さんは
「ケンカじゃないんだけどな。」と前置きしてから話し始めた。
『郁ちゃんってさ、ああみえて、
信じられないくらい頑固な面があって。』
『知ってる。』
『な(笑)。
郁ちゃん、妊娠に気付いたときから
オレに言うまでに
ひとりでかなり色々考え込んでて。
オレは しばらく何も聞かされてなかった。
妊娠確定って言われるまで 何回か
何も言わずに病院に行って。
それから 妊娠の報告を受けたんだけど
郁ちゃんが言った言葉がさ。
「ごめんなさい。
うむ、うまないを決めるのは私。
咲良に話すのも私がします。」
なんで?って思うじゃん。
もちろん 何故そんなことを言うか
理解できる部分もある。
にしても、一方的過ぎて
オレもカッとなった。
でも、こっちがカッと なればなるほど
郁ちゃんは頑なで。
話もできない状態だった。
これが原因。』
『……ちょっと 整理するから待って。』
えーーーっと。
『お母さんは、嬉しくなかったってこと?』
『……咲良に違う想像をさせる方が嫌だから
これだけ言う。
咲良のことを1番に考えた結果、だよ。
ニュアンスが難しいな。
咲良のために、とか考えての結果じゃなくて
郁ちゃんの中ではそれが自然と言うか
自動的にそうなってるんだけど……。』
『……つまり、私がイヤだって言ったら
堕ろす気だったってこと?!』
『郁ちゃんも ときどきは 間違うんだよ。』
ヒートアップしそうだった私の力を抜いたのは
お父さんの 表情。
「愛しくて仕方ない」って
お母さんへの気持ちが 見えた。
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