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2人でランチしに行こうとしたけど 奈央も 私も 楽器を持ってて 動きにくいし、入れるお店も限られる。 私のはまだしも コンバスなんて 椅子や横に置けないしね。 いつも行くお店が混んでて 詰んだーー。 『(ウチ)にする?』 『おばちゃんは?いる?』 『あー、さくの “家の人が居ない家の訪問禁止”って まだ続いてる?』 『うん。 お祖母ちゃんのときから受け継がれてるw』 『オカンの予定なんか把握してないし。 ちょっと電話してみる。』 奈央が電話したけど繋がらない。 『仕事かな。 んじゃあ、カラオケ行こう。』 ナイスアイデア! 楽器も置けるし、ご飯も食べれるし 何より、よく行くカラオケでは フードも充実してるし、 フリードリンクにアイス食べ放題がついてる♡ 部屋に案内され、 店員さんが出ていくとすぐに 「ん。」と フードメニューを私に差し出して  楽器を部屋の奥にきちんと置いた奈央。 『そのコに  もしも尻尾とかついてたとしたら 嬉しくてずっと尻尾振ってると思う。』 『なんだそれw』 ……だって私が知る限り こんなに大切に丁寧に扱う人  他に居ないもん。 笑いながら隣に座って  メニューを選んで注文送信したところで 奈央のスマホが鳴った。 「あー、もういいや。 え?さくが(ウチ)にくる話がでて オカンがいるかの確認。 今?カラオケ。そう。 羽奈は いない。 あー、うん、うん。はいはい。 わかった、さくに聞いてみる。 そんなこと言われても。 ……ハイハイ。 だから聞いてみるって。」 なになに? 私は 何を聞かれる? めんどくさそうな顔で スマホをテーブルに置く奈央の顔を見てると 「晩飯食べに来るか?ってか、 来てもらえってオカンがウルサイ。」と ため息混じりに言った。 ……お母さんは多分いいよって言うけど まだあんまり体調良くなさそうなんだよね。 『お母さんにご飯作ってあげたいから 今日は やめとく。 ごめん。』 『郁ちゃん、どうした?』 『え? 羽奈から聞いてない?』 『最近あんましゃべってない。』 『えー、羽奈から話してると思ってた。 お母さん、妊娠してて つわりで 入院したり  退院してからも 具合悪そうで。』 『マジ?! ……それで さく 元気ないのか。』 『元気なくない! っていうか いろいろ考えて わけ分かんないけど ……なんでみんな  私が喜べないみたいに言うの。』 うわ。ガマン……できない。 涙が溢れるのを 抑えられなかった。 『『ごめん。』』 同時だった。 この場から逃げ出そうと 立ち上がった私の手首を掴んだ奈央の手は とっても優しくて 振り払おうと思えば  すぐに振り払えそう。 すとん、ともう一度座ると 奈央は手を離し 何も言わず 待ってくれていた。
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