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私も お母さんに LINEしよう。 「羽奈と奈央と ご飯食べて帰ってもいい?」と ごめんね のスタンプを 送る。 スタンプなら こんなに簡単に謝れる。 あ。返信きた。 「わかりました〜!試験お疲れさま会ね。」と いってらっしゃい のスタンプ。 『咲良、郁ちゃんに連絡したの? いいって?』 羽奈が 私のスマホを覗き込みながら聞く。 『うん。大丈夫!いこー!』 お店に入り 食事しながら 3人で 他愛ないおしゃべり。 3人で、というより 羽奈と私が おしゃべりしてるのを 奈央が 相槌や ツッコミを入れながら聞くという いつものスタイル。 『さ。そろそろ ため息の理由(わけ)を 聞きましょう。』 なんの脈絡もなく 羽奈から そう問いかけられ ふふ。と 笑ってしまう。 ……心配してくれてたんだ。 『ありがとー。 試験は まあまあ出来たんだけど……。』 私は 試験勉強してて、お父さんが帰宅した時の事を 話した。 『その時に、八つ当たりしちゃって。 うちのお父さん、 専門学校卒でね。 学歴にコンプレックスあるの。 それを 知ってたのに そこ、突っついちゃった。』 『あー。謝ってないのか。』 奈央の 1人納得した呟きに こくんと 頷く。 『それもあって さっきの ごめんって言ってえらいねーって? 郁ちゃんにじゃ なかったのか。 自分が悪いと思うなら さっさと 謝れ。』 『なーお。 咲良だって わかってるよ、そんなこと! だから 困ってるんじゃん。 キツイ言い方やめて。』 ……でもホントに奈央の言う通りだ。 あれから お父さんとは ほぼ口を きいていない。 間に挟まれたお母さんは そのことについては何も言わないけど 心配させちゃってるのは わかってる。 『今日こそ ごめんなさいする!』 2人に向かって 決心を言葉にすると 不思議と 出来そうな気がした。 『それが最近イライラしてた原因かぁ。』と羽奈。 『謝ればスッキリ解決。良かったな。』と奈央。 あー。 2人には やっぱり イライラしてるのバレてたか。 でも これだけじゃないんだよね。 原風景の話を聞いてから 何度も何度も あの場面を 思い浮かべてしまう。 泣いている私は いったい 誰に 手を伸ばしてるんだろう。 私以外の人の 顔が 逆光のような感じでハッキリと見えない。 たぶん どちらも 女の人。 すごく 気になる。 気になるのに 思い出せない。
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