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羽奈と奈央にバイバイして
帰り道では ずっとイメトレをしていた。
うん、謝るぞ!
『ただいまー!』
『お帰りなさい。』
『ね、お父さんは?』
『今日は 遅いよ?お食事もいらないって。』
『えー……。』
意気込んで帰ってきた分、肩透かしを食らう。
「どうしたの?」と
心配そうに尋ねるお母さんに
「この前、ひどいこと言ったから
謝ろうと思って。」と 答えると、
お母さんは「そっか。」とだけ言い
嬉しそうに笑った。
その笑顔に
間違っていないんだってホッとする。
着替えて、お母さんと 少し雑談して
それから お風呂に入り、リビングに戻ると
「お父さん、もうすぐ帰ってくるよ。」と
お母さんが言った。
……謝らなくちゃ。
1度切れた緊張の糸を繋ぎ直す。
『咲良はえらいね。
ちゃんと自分で考えて、
ゴメンなさいしようって思って。
そういうところ、ホントにステキ。』
お母さんは
小さい子どもを相手にするお仕事も している。
そのせいか、いつもこんな感じで 褒めてくれる。
こちらが恥ずかしくなる程、
ストレートに 言葉にしてくれるから
それが どんどん積み重なって
私の自信になっている気がする。
私、意外といいコなのかも。
なんて思えるようになったのは
お母さんがいっぱい褒めてくれるからかもしれない。
『仲直りしたのね!』
翌朝、朝練に行く待ち合わせ場所で
報告するより先に 羽奈に そう言われた。
『なんで わかるのー??』
『スッキリが にじみ出てるもん(笑)。
咲良は
ムスッとしてるの時の方が
おじちゃんに似てるけどね。』
『なにそれー!(笑)。
お父さん、家では結構デレーだよ。』
『それも知ってる(笑)。
おじちゃん、
咲良を 溺愛じゃん?』
……うん。
大切にされてるって
私が実感できるように
お父さんもお母さんも
いつも言葉でも態度でも示してくれてる。
特にお母さんは。
私がお父さんと仲直りしたあと、
お父さんがお風呂に入っている時に
お母さんが 笑いながら こう言った。
『お父さんは 怒ってたんじゃないよ。
咲良もお父さんも、お互いが怒ってると思って
話しかけにくかっただけね。
2人、性格がそっくり。』
『そうなの?』
『うん。
でも 咲良から ごめんなさいって言ってくれて
すごく嬉しそうだったね。』
『うん。怒られると思ってたから
ちょっとビックリした。』
『お父さん、言ってたよ。
部活も頑張ってて
試験勉強の時間も
ちゃんと確保しようとしてる咲良は
自分が高校生の時より
ずっとしっかりしてるって。
頑張りたいって思える好きな事があるのは
とっても 良いことだからね。
お父さんも 私も 応援してる。』
……お母さんが 事ある毎に
何度も 言ってくれる言葉。
“好き”をたくさん 見つけられる人になってね。
初めて言われた時は この言葉の意味が
イマイチわかってなかった。
でも だんだん わかってきたよ。
好きな事だから 頑張れる。
好きがたくさんある方が シアワセ。
イヤイヤするよりも 楽しんじゃおう。
どれも お母さんが教えてくれたこと。
実際、お母さんは 毎日すごく楽しそう。
家事をしてても お仕事をしてても。
……私、日によっては お母さんにも
反抗的な態度なことも多いって自覚がある。
それでも お母さんは いつも 温かい。
お母さんは すごいなぁ。
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