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トントン。
『咲良?
ちょっと 開けて?』
間隔を置きながら、
こちらの反応を待っているような
そんな 控えめなノック。
何度目かのそれで 私は ドアを開けた。
ドアを開けると
お母さんが 安堵の表情を見せ
「開けてくれてありがとう。」と 言った。
『入って、おはなししてもいい?』
「うん。」と ぶっきらぼうに答える。
『さっきね、お父さんに 穂乃果さんから
お電話があったよ。
咲良、帰ってますか?って。
心配してたみたい。』
ママの名前をきいて
頭にかぁっと血がのぼる。
「……追いかけても来なかったくせに。」
ボソッと呟くと、
お母さんは え?と 聞き返した。
『あの人!
私が出て行っても、追いかけても来なかった!
奈央のこと、違うって言ってるのに悪く言うし!
昔からそう。
思い込みでいきなり怒り出すの!
私のこと、
熱が出てたらすっごく鬱陶しそうにして
邪魔もの扱いして……放ったらかしだったくせに
なんなの⁉︎
お父さんとお母さんも 私のこと邪魔なんでしょ!
もう放っておいてよ!
出て行ってっ!』
泣きながら感情を吐き出す。
もうやだ。
やだ。
ホントにやだ。
ベッドに突っ伏して泣いていると
背中にそっと 手が置かれた。
『邪魔だなんて 思ったことない。』
『うるさいっ!
出て行ってってば!』
背中の手を振り払い キッと 睨むと
お母さんは 本当に困った顔をしてた。
その時、ドアが開いて
お父さんが 入ってきた。
……ヤバイ。 怒られる……。
『落ち着いてから話、しような。』
お父さんが お母さんを立ち上がらせ、
部屋から出て行こうとすると
「え、待って。」と
お母さんは お父さんを制止し、
私の顔を見ながら 言った。
『ご飯、食べてないんでしょう?
いつでも食べれるから。
お腹空いたら、降りて来てね。』
1人になった部屋は
途端に静かで、
階下のリビングには
お父さん達の気配を感じる。
それが 一層
私の ひとりぼっち な気分を大きくさせた。
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