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クリスマスが近づいてきた頃、 部活を終えて スマホを見ると ママから 不在着信があった。 夏休み以来、だ。 もうすぐ冬休みだから 遊びにおいでってお誘いの電話? 困惑しながらも 心のどこかで ママからの着信に 喜んでいる私がいる。 LINEしよう、と アプリを開いたけど やっぱりやめた。 ママのアイコン が変わってたから。 良いお店のランチって感じの写真で ピントを合わせた一人分の食事と その向かいの席にも同じものが並んでる。 2人でランチしました、みたいな。 私は アイコンから そこにはハッキリとは写っていない ママと一緒に居る人を感じ 小さくため息をついた。 中学生になり 家族以外とのLINE解禁になってすぐの頃は 友達のアイコンやタイムラインに 一喜一憂してた。 え、このメンバーで遊びに行ったの? どうして私は誘われなかったんだろう……。 え、この2人 そんなに仲良かったっけ? 仲間はずれにされたような 取り残されたような そんな思いを 消化するのには 慣れも必要で。少し時間が掛かったんだけど。 今、その時と同じような気分。 ……誰だろう。 ママは よく 出かけた先の風景や 食事の写真を アイコンにしてるなぁ。 それも どこにいったのかな。 誰と一緒?って ほんの少し ヤキモチ?に似た気持ちが……。 いやいや、でもさ。 ママだって 出かけたり 遊んだりして当たり前。 そう自分に言い聞かせながら 家に帰ると 誰も居なかった。 あ、そうだ。 今日は 私よりお母さんの方が遅くなるって言ってた。 そんな日は いつも リビングの電気をつけると テーブルの上に お母さんからの 手紙がある。 お疲れ様。おかえりなさい、 おやつは これだよー、みたいな手紙。 リビングのカーテンを閉めようと窓に近づくと バルコニーに干しっぱなしの洗濯物が 目に入った。 もう。 おやつより 洗濯物だよ。 湿気ちゃうよー。 慌てて取り込んでいると 気づかないうちに お父さんが帰宅してた。 『ただいま。』 『おかえりー、これ お願い。』 どさっと バスタオル類を渡し、 残りの洗濯物を取り込みながら お父さんに 聞いてみた。 『あ、今日 ママから 連絡あったんだけど お父さんにも あった?』 お父さんの返事よりも 先に聞こえてきたのは お祖母ちゃんの 呆れ声だった。 『何の連絡だったの? もー、まったく。 ホントに勝手な人。』 ……お祖母ちゃん、来てたんだ。 『んー、わかんない。』 『わからないって 何?』 『着信があっただけで、出てないから。』 それをお祖母ちゃんは 私が電話に出たくないから 電話に出なかったのだと受け取ったらしく すこし機嫌を直し お父さんが 止めるまで ママの悪口を 延々と言い続けた。 最後にはお決まりの言葉。 「郁ちゃんが お母さんになってくれて 咲良は どれだけ 幸せか。」 ……しつこいなぁ!もうわかったってば! そう叫びたい気持ちを 押さえ込み 溢れそうな涙に気付かれないように 「うん。着替えてくるね。」と 言い 私は自分の部屋へ 逃げ込んだ。
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