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プロローグ
「ねぇ、渚?」
「なーに、悠真くん?」
4歳のまだ暖かくなりきっていない春、海を見ながら2人で遊んでいた。
「ぼくね、こんどおひっこししなきゃいけないの。」
「え?」
「・・・だから、だからね!ぜったいにまた渚のところにもどってくるから、いっしょにがっこうにいって、いっしょにぼくがいなかったぶんまで、いっぱいあそぼーね!」
悠真君は、少し悲しそうに微笑みながら、僕を見つめた。
「うん!もちろん!」
そう僕が返事をすると、今度は嬉しそうに微笑んで、はい。と右手の小さな小指を差し出した。
「渚はちょっとぼんやりしてるから、わすれちゃわないように、ゆびきりげんまん!」
「そんなことないよ!ぜーったいわすれないよ。・・・・・・でもいちおうね!」
僕も小さな小指を悠真くんに差し出した。
『ゆーびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます!ゆーびきった!』
そう言って2人で笑いあった。
すると悠真くんの顔が僕の顔に近づいてきて、唇が頰に触れた。
「渚だいすき。」
「ぼくも悠真くんのことだーいすき!」
その頃の僕は数少ない友達だった悠真君のことが、友達として大好きだったからそう答えた。
数日後、悠真君はいつもの海辺に来なくなった。
時が経つにつれ僕は幼い頃のことを、悠真君のことを、忘れていった。
あの、やくそくの事も。
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