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桜咲く頃
会社の敷地内に大きなサクラの木が並んでいる。
サクラの蕾が暖かい日差しに
誘われ花びらが開いて、空1面が花びらの絨毯のようにピンクに染めていく。
美緒はそのサクラの木を見上げ
少しずつ散っていく花びらを目で
追いかけていた。
木々の合間から花の匂いのする風が吹き、そよ急ぐ。
サクラの花びらが春風にみだれるよう強めの風が吹き上げた時、美緒の髪が舞い上がり、それを押さえようと手を上げた時、持っていた書類が
バサバサと飛ばされていった。
あっ…!
急いで書類を集めようと、しゃがみこんだ。ハラハラと飛んでいくのを目でその先を見ようとした時、誰かの靴先が見えた。
「飛んできた…」そう声かけてきたのは、浅井涼馬先輩、書類をヒラヒラとさせながら
渡してくれた。
「あ、ありがとうございます」
美緒は立ち上がり顔をほんのり赤らめ、書類を受ける。
涼馬先輩は、背が高い。見上げると美緒の頭をくしゃくしゃした。
「あっ…!涼馬先輩!」美緒はびっくりすると、「髪の毛に花びらがついてた」くしゃっと目尻を下げて笑いながら、構内に入っていった。
もう…
乱れた髪を整えながら、身体中に込み上げてくる、くすぐったい思いに耳まで赤くなるのを感じた。
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