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《初悦》
旦那様であって旦那様ではない…不思議な存在…
昼間の狂気から一変、その控えめで、優しい旦那様が愛おしく思えて…。
「旦那様の、…貴方の精を僕の中に、出して…ください、一度でいいから」
そんなことを願ってしまう。
「……」
困ったような、憂いを帯びた顔で、緩く首を振る男。
「お願い、最後まで、僕を…愛してください」
「…っ」
「駄目ですか?」
縋るような瞳に押され…
「っ……」
そんな切なく妖艶な姿に、堪らず菊之助を押し倒し、優しく口づけをしてしまう。
さらに身体に手を這わせ…菊之助の前を包み込む様に刺激を与えて…
後ろの孔にも指を伸ばす。
「あ、ぁっ、旦那様…っ」
ゆっくりと、じっくりと時間をかけてソコを愛撫され、とろける様に入り口が解れていく。
「……」
無言のままだが、身体を撫でる指先は優しく、その瞳は、菊之助に愛されていると錯覚させるほど、慈愛に満ちていた…
その解かれた孔へ、己の反り勃つ陰茎を触れさせるが…
不意に周りを気にする様子を見せる。
「旦那様…抱いてください、旦那様が欲しいのです」
そっと頬に触れ、瞳を重ねながら願う。
「………っ」
ついに決心して、男の熱く硬い塊が、ずぶずぷと、菊之助の胎内に優しく挿入ってくる。
「あッ、…アぁぁ…旦那様ッ」
「っ、……!」
そのままゆるりと腰を前後に揺らし…頬を撫で、まっすぐに見つめ合う。
時折、優しく唇を重ねられ、細やかに身体を愛撫されれば…身体がぞくぞくと震え…
熱い吐息が頬にかかる。
絶妙なところで前を扱かれ…何度も何度も絶頂が繰り返される。
「ぁ、アぁッ…ぃく!…ん、旦那様っきもちぃぃ、ァ!」
「…ッ」
腰を突き上げる速さは、次第に強く激しくなり、ぐちゅぐちゅ、ばちゅんばちゅんと繋がりあう淫らなオトが菊之助の嬌声とともに部屋中に響き渡る。
「ぁッ、も、出ちゃう、ァっ、あぁン!!」
前を扱かれるまま、ビュビュッと白液を腹の上に舞い散らせる。
「くッ…!!」
その瞬間、よりキツくなる接続部に、小さく声を洩らし、ビクビクと震えながら思いの丈を菊之助の胎内へ出し尽くした。
「ん、ハァ…ハァ、旦那様…」
こんなに気持ちの良い性行為は初めてだった…。
しばらく見つめ合う二人だったが、不意に男は伏せ目がちに視線を逸らし、そっと繋がりを解いていく。
離れようとするその着物の裾を掴んで呼び止める。
「そばに、いて下さい」
「……」
その願いに小さく頷き、新しい着物をそっと羽織らせてくれ…傍に横になってくれる。
菊之助は温もりを求め、そっと寄り添う。
「いつもの旦那様は、とても怖いのです、けれど、今の貴方様は怖くありません」
「……」
「僕は…旦那様に、愛されていると、思って、良いのですね?」
「……」
小さくまた頷いた。
「嬉しい…」
きゅっと、身体を寄せる。
その身体を優しく抱き寄せて、髪を撫でて、二人は夢のような幸せなひとときを過ごすのだった。
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