夢と再会

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夢と再会

「参りました」 剣の柄から手を離し、宙へと上げる。 そんな俺の姿に白龍が声を荒げる。 「紅蓮!手を抜くな!ふざけんな!剣を拾え!」 地面に落ちている俺の剣を蹴り上げた彼が舌打ちする。不満そうにこちらを睨んでいた。 「いいえ、参りました。白龍様には敵いません」 「どの口が!その上背で!はっ、なんだ、昨日俺のもとへ来なかったのは媚び方でも習っていたからか!」 蹴られた剣を拾う。 今日の彼は随分と苛立っているらしい。 彼は現皇帝の第一皇子であり、俺の従兄弟にあたる。兄弟である親同士の仲が良く、俺たちの年の頃が近いのもあり、頻繁に顔を合わせていた。 皇子とその従兄弟ではもちろん身分の差はある。だが、親しい仲だと言えるだろう。 「……少しは自分に力がついたと喜べば可愛げがあるのにな」 俺がそう呟くと武器を構えるのをやめた彼が舌打ちをする。今日の彼はいつもより余裕がない。何か嫌なことでもあったのだろう。 そんな彼に剣の切っ先を向けた。 「そうして感情的になって油断すると痛い目に合うぞ」 「はっ、おい、待て、ずるい!紅蓮、この卑怯者!」 「拾えと言ったのはお前だろう。油断したのもお前だ」 彼が武器を構える前に叩き落とすと悔しそうに顔を歪める。 「っく、可愛くないのはどっちだ!」 聞いていたのか。思わず、笑うと彼も笑っていた。 「最近は時間の流れが早く感じる」 剣技の時間を終え、2人で並んで座り、たあいない話をしていた。 「何を爺臭いことを。俺の方が年上だぞ」 俺の言葉に大きな口を開けて笑う彼が寝そべる。 「……龍王の時間が近付いてくるから」 天井を見上げる彼から出るのはいつになく不安そうな声だった。 この国では代々第一皇子の名前に龍の字がつく。 玉座につき、皇帝となった彼らは龍王の名を継ぐからだ。 「あーっ!俺は元々、王様なんて器じゃないんだよ!政治!国交!世継ぎに戦争!意味が分からないな!」 ばたばたと寝そべったまま手足を動かしながら彼が喚く。 再び口を開いた彼の声は震えていた。 「……不安だ。俺はこの国を、この国を生きる民を守れるんだろうか」 十分。十分だ。 人を思う心を十分に持っている彼は王にふさわしいだろう。 「白龍様」 「なんだ、改まって。気持ち悪い」 陽が傾いて、紅い。 燃えさかる炎の中にいるようだった。 「この国も民もあなたのものです。あなたが尊き龍の血を引いて生まれてきたその瞬間に決められたことです」 やめろ、と彼の制止の声がかかる。 「……龍の血?馬鹿げてる。俺たちの血統に優劣なんてない。戦争で前線に行く兵士も飢えて死にそうな子供も体を売って生きてる女も俺と変わらない。命は尊い。この国と同様に」 だから、と彼が続けた。 「俺と共にこの国を支えてくれないか。お前がそばにいてくれたら出来る気がするんだ」 もちろんだと頷いた。 燃えさかる炎のような紅の中で。 彼と共にこの国を背負うと約束した。
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