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死と始まり
父の生首には蛆が湧いていた。
赤黒く変色した血と腐った肉の臭い。
「反乱を企てていたそうだ」
「陛下も玉座について間もない」
「疑心で浅はかなことを……」
「いいや、力を示すにはいい機会だ」
騒めく声が耳につく。
「その辺にしておけ」
一際通る声だった。
「誰が聞いているか分からないんだぞ」
そう言った男がちらりとこちらを見た。
哀れむような瞳をしていた。
--可哀想?俺が?
「陛下に会わせてください」
揺れる馬車の中で立ち上がった。
周囲の人間が制止の声をかけてくる。
「触るな!近寄るな!馬車を止めろ!」
声を荒げる俺に人々が掴みかかってくる。
妹と弟の泣いてる声がした。
「陛下に会わせてくれ!納得がいかない!このまま罪人として都を追い出されるなんて!父は何もしてない!」
脳裏にこびりついて離れないのは父の優しい笑顔だ。
「白龍!どうして……!」
幼馴染で従兄弟で、今は皇帝陛下。そんな彼の名前を何度も叫んだ。
けれど、どんなに声を上げても届かない。
身体の中をじわじわと炙られているようだった。どうして、なんで。
誰よりも親しく近しい存在であった筈の白龍に父親を殺された。
説明もなく、会うことも出来ず、何もかも納得が行かなかった。
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