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懐かしい夢を見た。
あれから随分と時が経った。
白龍。現皇帝陛下、龍王様。
俺の父を殺した人間だ。
全く恨んでいないといえば嘘になる。
けれど、時間が経ったからだろうか。
今では仕方ないと思っていた。
自分の皇帝という立場を揺るぎないものにするためにはやはり脅かす地位の人間は処刑するだろう。見せしめの意味もあるかもしれない。
反逆すれば、お前たちもこうなる。
なりたくなければ忠誠を誓い、尽くすように。
仕方のないことだったのだと思う。
「兄上、またこんなところにいらっしゃったのですか」
馬を連れた弟があきれた様子で俺を見ていた。
「天気が良いんだ。お前みたいに内にこもっているのは性に合わん」
「わざわざ屋敷から離れてこんなところで……昼寝でもなさっていたんでしょう。能天気なものですね」
……見透かされていた。
弟は何やら言いづらそうな表情をしている。何かを堪えているような。
「なんだ、領主様のお小言は聞きたくないものだが」
「……その呼び方はやめてください」
今や、この領地の主である弟が苦笑した。
しかし、領主と言えど名ばかりだ。
父を殺され、都から寂れた田舎へと追い出すのに体良く言い換えただけの話だ。
それでも、領主の座に着いたのが俺ではなく、弟の紅耀であるのは正しい選択であったと思う。
ふぅ、と息をついた紅耀が口を開く。
「皇帝陛下が都でお呼びしています」
風が木々を揺らす音だけがやけに耳についた。
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