理由と感情

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理由と感情

「貴様を呼んだのは、見ての通り、城の働き手が少ないからだ」 陛下がちらりと葉月を見た。 「雑役以外にも任せたいことはあるが……詳しいことはまた話そう。今度こそ部屋で大人しく待っていろ」 そう言いながら立ち上がった陛下に葉月も連れる。そっと扉を開け、うやうやしく頭を下げていた。 「紅蓮、私に忠義を尽くせ。余計な口は開かない方が賢明だ。いざとなればその命を投げ出せ」 突然の強い口調に身が強張る。 有無を言わさない雰囲気がそこにはあった。 「……貴様の弟は、上手くやっているな」 最後に彼女がそう言った。もし俺が歯向かえば弟や妹が父と同じ目に合うのだろう。 誰かに秘密を漏らしたり意義を唱えれば次は弟と妹達の首が河原に並ぶのだろう。 俺が頷くのも見ずに彼女は葉月と共に去っていった。 言われなくとも、皇帝陛下に逆らう気などさらさらない。死ねと言われれば死ぬし、殺せと言われれば殺すだろう。 だからこそ、あの態度が分からない。 これから同じ城内で仲良くやろうというのに最初から牙を向けられた気分だ。 「……姉さん、怖い女だよねぇ。絶対結婚したくない手合いだ」 白龍が明るい口調でそう言った。 俺に気を使っているのだろう。 「優しいだけが、王の器ではないのだろう」 そう返すと白龍は困ったように笑っていた。
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