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とりあえず、植尾さんの耳についているボタンをそっと見る。ランプが点灯していて、監視カメラが作動していた。
植尾さんは悠を監視して録画している。いつか、そのデータを手に入れたい……。俺がいない間の悠を、植尾さんはじっくりと観察して、そのデータを持っている。
ツガイの俺を差し置いて……。
軽く嫉妬していた。
しかし、それは悠に知られないようにしたい。こんなに嫉妬にまみれていると思われたくない。
「気を付けて帰れ。何かあったらすぐに連絡しろよ」
無理をして笑顔で言うと、
「連絡なんてしないから。ボクひとりでなんとかなるし」
悠は怒ったように言った。年頃の男らしく、過保護を嫌う。
「悠が強いことは知ってるよ。でも、予期せぬ事態の可能性は否めない」
列車がホームに入ってきて、悠がビクっとした。
「……お母さんが」
悠はそこで言葉を止める。そこに俺も引っかかる。優しそうな悠の母親。父さんのツガイの奏さんの昔からの友人でもある。
列車の止まる音がして、少し悠の声が聞きとりづらい。
「家族がボクに会いたがっているから、帰るだけだよ」
それまで反抗的だったのに、急にしおらしく言い、手を握ってきた。
「わかってる」
周りに見えないように握り返す。でも、悠を待っているのは、悠の母親だけではない……。
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