1・世界一危険な魔導書

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「……えっと」  もう全くついていけないので、オウル先生と呆気に取られて、目を合わせる。 「よくわからないけど、ひとまず授与を待ちましょう」  魔水晶は変わらず、ほんのりと光を放ってはいるが、動きを見せない。  余りにも長かったのか先頭で見つめていた学生達はこちらに注目し始めた。 「長くないか? 適正なんだったんだ?」 「あいつ、遅刻魔のティアラじゃねぇか。大した事ないだろ」  段々と居心地が悪くなって、周囲の誹謗中傷まで耳に入る。 「先生、すいません。離れていいですか?」  次第に気分が悪くなってきて、私は離れたい意志を伝えた。  オウル先生も周囲の反応を見て、小さく頷いて、耳元で囁いた。 「貴方が最後だから、授与される物が出てきたら届けるから、何処かで休んでなさい」 「すいません」  こうして私の選抜式は幕を閉じた。  背中をぽんと叩いて、リアが駆け寄ってきた。 「大丈夫? 授与されてなかったし、授与される前にステージ降りちゃうし」 「少し気分が悪くて」 「あー、じゃああそこ行こっか」  そう言って、腕を引かれた。  正直、走れる気分ではなかったが、リアといると少し落ち着いてきた。  階段を登り、顔見知りの守衛さんと軽く会釈をして、扉を開いた。 「でーーん! 特等席の屋上に到着!」  リアが振り向きざまに、弾ける笑顔を向けてきて、同性ながらに綺麗すぎて、青ざめた頬が一瞬で紅色に染まった。
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