7・黒翼刀

7/16
前へ
/184ページ
次へ
黒い線影は、リアの白い光に置き換えられていき、その軌道を予知させた。  その線影はオーガの首元。  鎧の隙間をなぞるように重ねられていた。  切っ先が見事にオーガを捉え、オーガは後ずさりする。 「それまでやな。いくらオーガでもわかるやろ」  オーガは首元を押さえ、自らの体液が腕を滴り落ちるのを見て、リアを()めつける。  しかし首元の腕を離さず、人差し指と中指で自らの目を指して、その指をリアに向けた。 「……?」  リアはそれが何を指し示すかわからなかったが、シエラが呟いた。 「あれは『おれの魂がお前を見続けるぞ』というオーガ特有の白旗宣言ですね。つまり、勝ちを譲り、自身の誇りや魂を勝者に授けるという特有の習慣ですね」 「へぇー。シエラ本当に凄いね」 「何言ってるんですか、お2人の示し合わせなしでのあの連携、流れるような阿吽の呼吸。歴戦の魔導師かと思うほどですよ!」  少し褒めすぎているが、少し嬉しい気持ちを隠せない。  リアは魔法を解除すると、しなやかに歩み寄りながら、乱れた髪をポニーテールに結い直す。 「うん、肩慣らしには丁度えぇね」 「そうだね」 「それにしてん、さっきの燕の魔法、えぇね」  本当は7羽の燕が出るはず、なんて言えないので笑って誤魔化したが、ばれることはなかった。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

375人が本棚に入れています
本棚に追加