375人が本棚に入れています
本棚に追加
黒い線影は、リアの白い光に置き換えられていき、その軌道を予知させた。
その線影はオーガの首元。
鎧の隙間をなぞるように重ねられていた。
切っ先が見事にオーガを捉え、オーガは後ずさりする。
「それまでやな。いくらオーガでもわかるやろ」
オーガは首元を押さえ、自らの体液が腕を滴り落ちるのを見て、リアを睨めつける。
しかし首元の腕を離さず、人差し指と中指で自らの目を指して、その指をリアに向けた。
「……?」
リアはそれが何を指し示すかわからなかったが、シエラが呟いた。
「あれは『おれの魂がお前を見続けるぞ』というオーガ特有の白旗宣言ですね。つまり、勝ちを譲り、自身の誇りや魂を勝者に授けるという特有の習慣ですね」
「へぇー。シエラ本当に凄いね」
「何言ってるんですか、お2人の示し合わせなしでのあの連携、流れるような阿吽の呼吸。歴戦の魔導師かと思うほどですよ!」
少し褒めすぎているが、少し嬉しい気持ちを隠せない。
リアは魔法を解除すると、しなやかに歩み寄りながら、乱れた髪をポニーテールに結い直す。
「うん、肩慣らしには丁度えぇね」
「そうだね」
「それにしてん、さっきの燕の魔法、えぇね」
本当は7羽の燕が出るはず、なんて言えないので笑って誤魔化したが、ばれることはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!