7・黒翼刀

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「こんな感じなんだけど、シエラはどう? リアに合わせられそう」  シエラはきょとんとして見せて、唸るように「うぅーん」と悩ましい顔。 「私、基本的には薬草学しか出来ないので、攻撃となるとこれくらいしか出来ないです」  そういうと、駆け足で私達の横を通り過ぎて、誰もいない空間に赤い粉を撒いた。 「灯火(トーチ)」  シエラが唱えたのは、家庭級の火属性魔法。  どんなに強く魔力を込めても、掌大の炎を出せる程度。  それが赤い粉に触れた瞬間、粉から粉へ火が移り、爆炎へと変化する。  それは広範囲の通常級魔法となんら遜色のない威力。 「凄いよ! シエラ、それどうやるの!」 「これは引火性の高い乾燥させた薬草と、爆発性を持ち合わせる火薬草を調合した粉に、火属性魔法を加えて、爆発させるだけの手品です」 「手品で人、殺せるで、これ」  シエラは薬草学を応用した攻撃手段を見せた。  通常、薬草学とは、魔力の増強や肉体強化などに用いられるが、これは明らかに魔法をタネにして、魔力なしにその威力を飛躍的に上げている。  エルフの賢者に劣らない叡智のなせる技である。 「遠距離にはむかんけど、罠とか細工にはもってこいやね」 「ほんとほんと! 器用だよね」 「そ、そうですか……?」  自信なさそうに照れるシエラの肩をリアが抱き、私は掌を掴んで振り回す。  シエラは目を回してながらも、嬉しそうに笑顔を見せた。 「あっ、ところであの刀、どうする?」  オーガが握りしめている刀。  魔力を無効化するそれは私達、魔導師にとっては無用の長物。 「んー。売るくらいしか思い当たりませんね」  シエラから出た言葉に「現金な子やわぁ」とリアが冗談混じりに弄る。  リアにも気に入られた様子に、私はほっと胸を降ろした。 「そいつはおれの獲物だぜ」  突然、後ろから声がするが、聞き覚えのある声。 「あれ? クィールさん?」 「げげげ! あのときの女!」  私が氷漬けにした剣士。  つい最近のことだったのに、存在をいままで忘れていたなんて言えない。 「いや、今のはなしだ……ていうか、お前達、学生だろ!? なんで外界に出てきてんだよ!」 「んー。内緒」 「内緒ってなんだよ!」  何だか1人で空回りしてるのを、私達はくすくすと笑っていたが、シエラの目がとても冷たく凍りついていた。  ダメなタイプなのかな?
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