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「……だめだ。こりゃ妖刀の類だな」
「妖刀?」
クィールが刀を念入りに調べて諦めるように尻もちをついた。
「曰く付きの刀の事だよ。基本的には代償を払うことで強大な力を得るが、代償を払わなければただのなまくら刀だ」
「そんなのあるんだ」
正直、魔法の関わらないことはあまり詳しくない。
「弟なら触れられるかもしれないが」
クィールは溜息とともに寝転がって、刀を眺めている。
「弟がいるんだね」
「あぁ、剣士学校に通ってるんだが、そこで与えられた適正が『妖刀使い』っていう、これまた特殊な適正らしくてな」
「学校……」
剣士を目指す学生。
随分、都合よく舞い降りた話だけど、私達が求めている人材。
弟さんがどうこうというよりは、剣士学校と繋がりが出来るのはありがたい。
なにより妖刀使いというのが気になる。
「妖刀使いってどんな適正なんですか?」
「弟曰く、妖刀を手にしても代償を払わずにその強大な力を扱えるらしいが、兄としては心配だな……」
クィールは続けた。
「妖刀のような強大な力は魅力的だからな。代償を払わなくていいにしても、その力に魅了されてしまうことはあると思うんだ」
「確かに……」
「だから、弟にはなるべく妖刀のような刀は持たせたくはないんだ」
クィールは萎れたような表情で空を見上げている。
本当に心配をしているのが、見て取れた。
あわよくば弟さんにこの刀を渡して、パーティーにするのもありと思っていたがそれは難しい。
普段は、(たぶん)偉そうなクィールがこんな表情をするなら、望んではいないはず。
「ひとまず弟さんに会ってみてもいいですか?」
剣士学校との繋がりを持つ為に、程度の気持ちで会うことにしよう。
「んっ、たぶん授業が終われば、会えるはずだぞ」
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