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「それじゃあ学校長に会わせて貰えないかな?」
「校長ですか? 不在かもしれないですけど、案内しますね」
「あっ、まって! 君、名前は?」
「あっ。そうですね。失礼しました。僕の名前はクィートです」
「お兄さんと名前似てるね」
「我が家はみんなクィーから始まります。これには『誠実』という意味が込められているそうです」
「なるほど……」
リアと見合わせて、クィールとの初対面を思い返す。
誠実とは、到底かけ離れていた事はどうやら胸に秘めなきゃならない。
「ところでお2人は15~16歳と言ったところですか? 魔法学園の中学年というと、それくらいのイメージなんですけど」
「そうですよ。クィートくんはお幾つですか?」
「僕ですか? それはおいおい自己紹介していくということでいかがですか?」
それを聞いたシエラが小さく一言呟いた。
「事情あり……ですね」
「鋭いですね。まぁ、それもおいおい説明しますよ」
「どういうこと?」
シエラは首を横に振り口を開こうとはしないが、自身の腕のローブを固く握りしめている。
何か思い当たる節があり、それは余り好ましいものではないことが窺える。
「それではこちらです」
シエラの表情が、クィートに立ち篭める暗雲を予見させ、彼のあどけない容姿が、底知れぬ不安を駆り立てている。
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