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「こちらを曲がったところです」
じめじめとした薄暗い廊下は松明に照らされて、換気口などはない。
まるで洞窟にでも迷い込んだような重苦しさが付きまとう。
「こちらです」
案内された先には扉のついていない手掘りでつくられたような横穴があり、それを潜ると小さな机に両手をのせて、顔の前で指を交差させる男性。
「よく来たな。話は聞いている。新しい組織の為の人員を探しているそうだな」
どうやら学園長の根回しが行き届いている様子。
男性は机に片手を乗せたまま、立ち上がり私達を見据えた。
この部屋にも申し訳程度に松明が辺りを照らし、ゆらりと揺れた灯火が学校長の顔を照らす。
この薄暗さに反して、爽やかな面影。
髭は少し生やしているが、やや赤い短髪に額には大きな1本傷。
「オレはヘルハウンド・エンセンだ。宜しくな」
「私はティアラといいます」
「F・リアーナです」
「シェリランテといいます」
順に挨拶をして、会釈をすると、爽やかな笑顔で頷いてみせる。
「どうやらクィートがお目に止まったようだな。彼は優秀だから、仕方あるまいな」
豪快に笑い声をあげると、ゆらりと松明の灯火は揺れて、声は部屋の中で反響する。
「しかし、いいのか? 彼は『妖刀使い』だぞ?」
いわく付きだぞ、と言わんばかりに声をあげるが、クィートは顔色ひとつ変えない。
「それなんですけど……」
私達は例の刀を取り出した。
「これを先程見つけまして」
取り出したのはオーガから頂いた妖刀。
学園長は興味深く眺めると、小さく呟いた。
「情報開示」
それは物の性質を得られるという魔法。
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