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8・忍び寄る影
「ねぇねぇ、地図とか売ってないのかな?」
「地図があったら今頃、世界中どこでも魔法で飛んでいけると思うけど」
私達はパーティーを集め、外界へとクエスト依頼をこなす為に道具屋へ立ち寄っている。
リアは私の疑問を適当にあしらいながら、ポケットの多いポーチを品定めしている。
「じゃあさぁ……」
私は特に欲しい道具がなく、居場所のない心地悪さを誤魔化すように口を動かしていた。
けれど、振り返ると、そこには熱のこもった眼差しで道具を睨みつけるシエラ。
「シエラ、怖いよ?」
「えっ、あっ、すいません、集中しすぎていました」
均整のとれた顔立ちと、秀でた薬草学の知識を持つエルフ。
ただエルフに特有の、独特の空気感は群を抜いて高い。
自分の好きなことや、興味のあることに関しては、限度を知らない、という印象は出来る程度の付き合い。
「そういえばクィートくんは?」
「外でまってますゆうてたよ」
人族の剣士志望の学生。
与えられた適正は『妖刀使い』という特殊職ではあるが、大人しく誰にでも距離を置いていそうな印象。
はっきり言ってまだ、何を考えているかはわからないけど、私と果し合いをしたクィールの弟で、無下にはできないし、妖刀使いという適正を頼りにしている。
これから先の前衛を任せることになるので、早く仲良くなって、フォロー出来るようになりたいと思っている。
「ひとまずこれを買ってくる」
「あ、リアさん、これも合わせて買ってください」
「なんでうちが買わないかんの?」
「えっ? 貴族なので、お金ありますよね?」
「後で打ちのめす」
「野蛮ですね、じゃあこれお願いします」
「聞いとった? うちの話」
新しい風は、思ったよりも自分勝手に吹き回りそう。
リアならそのうち制御するだろうから、ほったらかして良さそうだけど、お店の入口で待つクィートくんは、どうにも無風。
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