8・忍び寄る影

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私は特に買うものもないので、小さないざこざを起こしている2人を置いて、お店の外に出ていった。 「クィートくん」 「あっ、ティアラさん、もう済みましたか?」 「ううん、私はなにも買わないでいいや。2人は中で小競り合いしてるから置いてきちゃった」 「そうですか、リアーナさんは性格が見た目よりきついですもんね」 「おっ、よくわかってるね」 「見れば誰でも分かりますよ」  そんなものなんだろうか、日頃から一緒にいると、そういう感覚がなくなっていくのだろうか。  ひとまずはクィートくんがもっと気さくになるといいんだけど。 「ねぇ、あの黒曜刀? どう? 扱えそう?」 「問題ないですよ。僕の適正があれば、どんな妖刀も僕にとっては性能の良い刀にしかなりませんから」 「どういうこと?」 「僕の適正は妖刀から受ける呪いのようなものを無効化するかわりに、その性能を半減されてしまうというものです。簡単にいうと、デメリットをなくすかわりにメリットは少なくなるっていう感じですね」 「へぇー。便利だけど、勿体ないね」 「まぁ、命を吸われるよりは随分優しいハンデだと思います」 「たしかにね」  話をしてみると、取っ付き難いということはない。  少し距離を置いている節はあるけど、会話は出来るし、時々表情も見せてくれている。 「ティアラさんは……複製魔導師でしたっけ?」 「うん、そうなの! よくわかんないけど、魔法はその規模を小さくして、複製するみたい」 「そうなんですか? ティポグリフの時の聖なる矢(セイントアロー)は通常より大規模だったと聞いてますよ?」 「あれは……言われてみれば、必死だったからそんなの忘れてたもんね」 「忘れてるだけで、通常規模になるなら随分曖昧なものですね。魔力量とかじゃないですか?」 「魔力量で規模を変えられるってこと?」  
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