8・忍び寄る影

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「なんや、空回りやん」  リアが不貞腐れるように怪訝な表情を見せる。 「ごめんなさい、私の早とちりでした」  シエラが慌てて、リアに頭を下げてどうにか機嫌をとろうとするが、リアは手をふって、「シエラはよう気付いてくれたよ」と褒める。  シエラは少し嬉しそうにして、小さく頷いた。 「まぁ、こういうこともあるよね」 「なんだか迷惑かけちゃったみたいですよね……?」  クィートくんは伺うように顔を覗かせると、申し訳なさそうにそれぞれに謝罪をした。  正直、悪いのは3人が勘違いしたことで、形見ならどんなものでも身に付けていたいのは当然の話だった。 「めでたしめでたしだね」  私がまとめて、みんなで笑ったり、落ち込んだりしている最中、私の視界に身を隠すように柱の影に佇む、頭までコートに身を包んだ人影。  私が凝視すると、視界から消えるように柱にゆらりと重なって、身を下げた。  明らかに違和感のある所作に疑念を抱き、私はゆったりと歩み寄る。  1歩、また1歩。  恐る恐る構えながら柱の裏を覗き込んだが、誰もいない。 「どうしたんですか?」  シエラの声にはっとする。 「なんでもないよ」  私は取り繕うように手を振り、柱を離れた。  私の勘違いならいいんだけど、ねっとりと絡みつくようなその視線が、これから先の不穏因子であることを物語っているとは、私はこのとき思いもしなかった。
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