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「なんや、空回りやん」
リアが不貞腐れるように怪訝な表情を見せる。
「ごめんなさい、私の早とちりでした」
シエラが慌てて、リアに頭を下げてどうにか機嫌をとろうとするが、リアは手をふって、「シエラはよう気付いてくれたよ」と褒める。
シエラは少し嬉しそうにして、小さく頷いた。
「まぁ、こういうこともあるよね」
「なんだか迷惑かけちゃったみたいですよね……?」
クィートくんは伺うように顔を覗かせると、申し訳なさそうにそれぞれに謝罪をした。
正直、悪いのは3人が勘違いしたことで、形見ならどんなものでも身に付けていたいのは当然の話だった。
「めでたしめでたしだね」
私がまとめて、みんなで笑ったり、落ち込んだりしている最中、私の視界に身を隠すように柱の影に佇む、頭までコートに身を包んだ人影。
私が凝視すると、視界から消えるように柱にゆらりと重なって、身を下げた。
明らかに違和感のある所作に疑念を抱き、私はゆったりと歩み寄る。
1歩、また1歩。
恐る恐る構えながら柱の裏を覗き込んだが、誰もいない。
「どうしたんですか?」
シエラの声にはっとする。
「なんでもないよ」
私は取り繕うように手を振り、柱を離れた。
私の勘違いならいいんだけど、ねっとりと絡みつくようなその視線が、これから先の不穏因子であることを物語っているとは、私はこのとき思いもしなかった。
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