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9・宗教改革の兆し
その頃、学園では学園長と剣士学校の学校長が教員を集めて、緊急会議を開いていた。
その間、学生達は休日扱いとなり、歓喜の声が挙がっていたが、教員達は学生の怠けより優先すべきことがあった。
「お集まりになったでしょうか? 緊急事態のため、皆様にお集まりいただき、まことに恐縮ではありますが、事が大きいだけに猶予がありません」
学園長が礼に乗っ取り、挨拶をすると皆、頭を深く下げる。
その中で横柄な態度をとっているとするならば、学校長ともう1人。
「それよりも話は軽く聞いているが、あの宗教に動きがあったとか」
話を遮るように言葉を放ったのは、ギルドマスター。
今や引退してはいても、現在戦闘を可能にする中では最強クラスの人物。
「はい。本日、学校長と話し合いを設けている最中、学園内へ侵入した不審者を捕らえました」
「あぁ、見事な隠形に少し気付くのが遅れたよ」
学校長が足を組んだまま、照らされるような赤い髪を掻き分ける。
「ヘルハウンドの腕が落ちたのではないか」
豪快に笑いながら、ギルドマスターが冷やかしを入れる。
それを固唾を飲むように見守る教員達はどこか表情が固い。
それもそのはず。
学園長T・ユーディティス。
伝説的な魔法で女王のユーデと呼ばれる大魔導師。
学校長H・エンセン。
謎に包まれた剣士だが、虎の如く激昴する剣術と恐れられた若き剣術家。
そしてギルドマスター。
最強と謳われる貴族の名を持たない実力者。
「自己紹介をしておこう。クラウスだ。以上」
唐突な自己紹介は普通なら失笑ものだが、ギルドマスターともなると、皆緊張で固まることしか出来ない。
更には同席して静かに佇む賢者。
B・チチャ。
賢者の参加が事の真相の信憑性を物語っていた。
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