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「早速ですが、捕らえた者をお見せしましょう、オウル先生」
「はい」
隠密業が得意なオウルが、学園長室の奥から黒い棺のような大きな木箱が現れた。
その異形は見るものを怖気させるような、頭頂部には人の顔を模した金属性の顔型。
「これは古くから伝わる拷問器具です」
オウルが淡々とした声色で、穏やかでない言葉を発して、木箱を開ける。
「見ての通り、現在はただの木箱になっております」
中には内側も黒塗りに光る塗装と、中に入れた物を固定するような茶色のバンド。
何か得体の知れている液体を吸っているのだろう、黒色に変色した箇所が見て取れる。
そしてバンドで固定された物。
既に人とは言い難い程に、体色は白く、その上に塗り付けられたように満遍なく広がる黒赤色。
舌を噛みきらないように口にも布を噛まされて、意識はなく、衰弱している。
「見ての通り、拷問を行っております」
学園長は平坦な声色を変えることはないが、周囲は顔色を青くさせる程に驚愕している。
「拷問はちとやりすぎてはいないか? 罪人ならまだしも、これでは学園長が罰せられる可能性もあるのではないか?」
ギルドマスターが声を上げる。
唯一、ギルドマスターと学校長は顔色を変えず、チチャは目を閉ざしたまま、傾聴していた。
「クラウス、忘れたか? ユーデにはあの魔法があるんだぞ?」
学校長はギルドマスターをたしなめるように諭した。
「そうです、私の魔法、拒絶を拒絶するで、拒絶されることなく、真実を教えて頂きました」
これが学園長の魔法の真髄。
学園長の言葉に嘘をつくことは許されず、学園長の言葉に従うことしか許されず、魔法を掛けられた者は学園長のあやつり人形と化す。
故に人々は恐れを含めて女王のユーデと呼ぶのだ。
「相変わらず性格の悪い魔法を扱うな」
ギルドマスターは椅子に腰をかけて、腕を組む。
怪訝な表情に、余り好みの魔法でないという感情が見て取れた。
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