9・宗教改革の兆し

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「早速ですが、捕らえた者をお見せしましょう、オウル先生」 「はい」  隠密業が得意なオウルが、学園長室の奥から黒い(ひつぎ)のような大きな木箱が現れた。  その異形は見るものを怖気させるような、頭頂部には人の顔を模した金属性の顔型。 「これは古くから伝わる拷問器具です」  オウルが淡々とした声色で、穏やかでない言葉を発して、木箱を開ける。 「見ての通り、現在はただの木箱になっております」  中には内側も黒塗りに光る塗装と、中に入れた物を固定するような茶色のバンド。  何か得体の知れている液体を吸っているのだろう、黒色に変色した箇所が見て取れる。  そしてバンドで固定された物。  既に人とは言い難い程に、体色は白く、その上に塗り付けられたように満遍なく広がる黒赤色。  舌を噛みきらないように口にも布を噛まされて、意識はなく、衰弱している。 「見ての通り、拷問を行っております」  学園長は平坦な声色を変えることはないが、周囲は顔色を青くさせる程に驚愕している。 「拷問はちとやりすぎてはいないか? 罪人ならまだしも、これでは学園長が罰せられる可能性もあるのではないか?」  ギルドマスターが声を上げる。  唯一、ギルドマスターと学校長は顔色を変えず、チチャは目を閉ざしたまま、傾聴していた。 「クラウス、忘れたか? ユーデにはあの魔法があるんだぞ?」  学校長はギルドマスターをたしなめるように諭した。 「そうです、私の魔法、拒絶を拒絶する(アブソリュート)で、拒絶されることなく、真実を教えて頂きました」  これが学園長の魔法の真髄。  学園長の言葉に嘘をつくことは許されず、学園長の言葉に従うことしか許されず、魔法を掛けられた者は学園長のあやつり人形と化す。  故に人々は恐れを含めて女王のユーデ(クイーンオブユーデ)と呼ぶのだ。 「相変わらず性格の悪い魔法を扱うな」  ギルドマスターは椅子に腰をかけて、腕を組む。  怪訝な表情に、余り好みの魔法でないという感情が見て取れた。
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