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「それで、そいつはなんを語ったのだ?」
ギルドマスターの質問に、学校長も視線を学園長に移した。
チチャもこれに右目だけを開いて、耳をすませた。
「簡潔に申しまして……」
一瞬の沈黙の後、学園長から発せられた言葉が皆を硬直させる。
「精霊印の子供を見つけた。我々の悲願を成す時が来た。精霊の力を持って、我々は魔物の地に、血の雨と、人類の進化を成し遂げる」
それはある宗教が口にする決まり文句だが、1つ違う点がある。
その宗教は普段、『精霊印の子供を見つけたならば』から宗教理念を語るが、それは仮定ではなく、断定的な言い回しであり、精霊印の子供と言われて、2人が身に覚えがあった。
魔法学園のティアラ。
そして剣士学校のクィート。
学園長と学校長の視線が合い、事の重大さを共通認識に変えていく。
「なるほどな……。黙って見ておくわけにもいかないというわけですね」
学校長が組んでいた脚をおろして、溜息をこぼす。
「さすれば、今の状況は彼らにとって、目的が自ら野に放たれた、というわけですか」
学校長が重厚な声色で、学園長へ視線を送る。
「そうです、まさかティポグリフに次いで、このような状況になろうとは」
「いよいよあの生徒達が世界の中心になり得ると言うことですね」
2人の会話を聞いていたギルドマスターが疑念を抱き、身を乗り出そうとした瞬間、「お聞きします」とチチャが初めて声を発した。
「なんでしょう?」
学園長が淡々とした口調で聞き返した。
それは賢者がここで動くであろうことを理解していたからであり、賢者が動くのように誘導したからでもある。
「その生徒達というのは、ティアラさん、リアーナさんということですか?」
「正確には違いますが、彼女のパーティーに精霊印を持つ子供が2人いるのは違いないですね」
「そのパーティーは現在は?」
「今頃は外界に出ているのではないでしょうかね?」
学園長は飄々とした態度を維持したまま。
「これは大問題ではないですか? すぐにでも彼女達を戻す必要があると思いますが?」
チチャの言葉に、学園長は横に首を振る。
「あのパーティーは現在、ギルドに所属するパーティーの中でもかなり上位のパーティーになります。心配は無用でしょうね」
「本当にそれで事が起きないと?」
「勿論、対策はたてておりますよ」
学園長が机を1度叩くと、魔法陣が机に描かれて、6羽の燕が魔法陣から出現する。
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