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周囲の期待が高まっている。
容姿端麗、成績優秀、男勝りと来れば、手の届かない存在として扱われるのも頷ける。
それに比べて私はどうなんだろうと、思いにふけようと下を見ると、一冊の本が落ちている。
「あれ? さっきのフードの子の落し物かな?」
随分と古めかしいのに、やけに小綺麗にされている。
持ち上げると随分と分厚いことに気付かされる。
なによりこれはただの本ではない。
魔力を永久的に閉じ込めることで、魔法の手助けとなるとされる魔具だ。
見たことは無かったが、確信を持ってそう言えた。
文献で読んだことのある魔具とは違うようだけど。
しかし先程の少年は、とうに見えなくなっていた。
「大事なものだろうし、今度会ったら渡してあげよう」
自作の大きめのアイテムポーチにすっと本を入れようとした際に、ふと著者の文字が目に入る。
「……ジンオウ?」
この名前には聞き覚えがある。
誰だって知っていると言ってもよい程に有名な魔導師。
けれど、ジンオウの書物は全て読み漁っていた。
誰よりも図書館に入り浸り、図書館のありとあらゆる本を読んでいる私が知らない。
「これは見覚えないから、同姓同名なのかな?」
本を見つめていると、ステージに向けて大きな歓声があがる。
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