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ふとステージを見やると、リアの頭上に一本のロッドが降りてきた。
短めで使いやすそうな、その中心には薄い橙色の宝石のような。
「オリハルコン……あの杖、魔具だよな」
「すげぇ。魔具なんて見たことねぇ」
周囲の熱気が高まっていく。
「それに聖道魔術師って言ってたよね」
私は聞いていなかった。
けれど聞き覚えがある。
かつて、『聖道のフルグランテ』と呼ばれた賢者が唯一与えられていた適正だ。
図書館に写真まで飾られている有名人。
「うわぁ、緊張したぁ」
リアが私の横に戻ってきて、小さな溜息をついた。
周囲の視線が熱烈にこちらに、勿論、私ではなくリアに注がれている。
「それすごいね、魔具だし魔力供給量が漏れ出てる量からしてとんでもないロッドだね」
「そうだね、はっきり言って持った瞬間にうちの魔力量が跳ね上がった気がするんよね」
「それに聖道魔術師って――――」
「続いて、ティアラさん」
ステージ上のオウル先生から、私の名が響き渡る。
「ティアラの番来たじゃん!」
リアのテンションが一つ上がったけど、私は吸い取られたようにテンションが落ちる。
とうとう来てしまった。
周囲がリアに熱烈な歓声と視線を送る中、誰にも注目されることなく、私はステージに上がった。
こうなれば、可及的速やかにここを立ち去るしかない。
「お願いします」
私は覚悟を決めた。
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