2・複製魔導師の憂鬱

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2・複製魔導師の憂鬱

私はあれから自分の置かれている状況を整理し続けていた。  1つ、恐らく伝説の魔術師ジンオウの魔導書。  規格外すぎて、読むのも(おぞ)ましい。  早く落とし主を見つけて、返さなきゃ、私には扱えない魔法ばかり。  1つ、複製魔導師について。  これはあの後にシェーンから聞いた話だけど、複製魔導師は基本的に悪しき力に呑まれる者が多いそう。  魔法や魔術をコピーする能力があり、初回使用は複製する行程。  2度目から使用が可能になるらしい。  そして咎が用いる魔法等も複製出来るということ。  勿論、伝説の魔術師の魔導書も可能。  1つ、右手に描かれている謎の文字。  これについてはシェーンもわからないらしく、詳しいどころか、些細な情報もなし。  頭を抱えるくらいじゃ足りないくらいに、考える事が多い。  ひとまず複製魔導師は魔力の使用量で魔法をある程度まではコントロール出来るようなので、出来うる限り、一般的な魔法を複製していこうと決めた。 「ティアラ」  リアが肩を叩いて、振り返る私の頬に指を刺した。  よくある遊びに全く気付かなくて、頬が見事に貫かれた。 「ごめんごめん、そんな勢いで来るとは思ってなかったんやて」 「めちゃくちゃ痛いんだけど」  手を合わせて、ごめんごめんと頭を下げるリア。  気にしないでと小さく呟いて、溜息を零す。 「もともと溜息多いけど、このところ、とくに多いよね」  勿論、溜息の一つや二つでは全く足りない。 「助けてよ、リア……」  私には扱えない。  魔導書も、適正も。
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