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3・紅竜ティポグリフ
私達は安心して、少しゆったりとしたペースで塔を目指していた。
帰りは景色を楽しむ時間もあり、少し遠回りしながら辺りを見回していた。
湖が見えて、私が湖に行きたいと言い出して、2人の静止はあるものの、2人も始めての外界の為、興味をひかれて湖に舞い降りた。
「すごい綺麗」
「本当やね」
視界を満たすような湖は太陽の光を反射して、キラキラと眩く輝く。
清涼な風に髪を解かれて、私は髪を抑えるように髪を撫でた。
「気持ちいいねぇ」
「咎が出てくるまではみんなここを歩いてたんやろ? 羨ましいわぁ」
リアと湖を周回したり、初めて触る自然の水に触れてみたり、2人で騒ぎながら遊んでいた。
キングスマンはそれをただただ見届けているが、心中は清らかではなかった。
「眼福だね」
後で聞いたけど、2人を見て、心を癒していたらしい。
嬉しいような、変態っぽいような。
そんなこんなでのんびりしていたけど、キングスマンは一応、周囲を警戒していたようで、私が楽しく芝生に横になっていると、頭上に顔を出してきた。
「2人とも、戻るよ。塔の方から嫌な魔力を感じる」
「えっ」
リアと私はすぐ様、体を起こして、キングスマンが作り出した絨毯に慌てて乗った。
そして塔に向かっている最中に、世界に響いたのではと思う程の轟音が耳に劈く。
「なにこれ鳴き声!?」
「あかん、耳が割れてまう!」
キングスマンは苦悶な表情だが、ただ前を見つめ続ける。
「あれだ!」
キングスマンが指さした先には、丘の上に塔があり、その前に異様に大きな巨体。
ギルドマスターがいる辺り。
他のパニックホールも見当たらず、穴は閉じているにも関わらず、あんな巨体が単独でいることは、想定外。
なにより追い返す先がなくなっている。
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