スポッティング・スコープ

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スポッティング・スコープ

いつも君を見ていた。 初めて君の姿を見た時、僕は恋に堕ちた。 すらりとした長身に、ゆらゆらと振れる腕。細い腰に乗っかった広い背中。そんなアンバランスさが危うげで、目が離せなくなった。 たとえそれがモニター越しだったとしても。 それがいけない事だというのは、辛うじて分かっていた気がする。 でも止められなかった。自分で動く事は叶わないけれど、それでも僕は君が欲しかった。 電車を待つ駅のホームでスマートフォンに目を落とす君の姿を、僕は今日もモニター越しに見ていた。 「最近は街中どこにでもカメラがあるんだ。これで好きな場所を見るといい。絶えず移ろいゆく外の景色を眺めているのは、退屈しのぎになるだろう?」 そう言われた当時の僕は、着々と部屋にモニターを運び入れては組み立てていくロボットのような作業員たちを恨めしく思って、睨み付けていたものだ。 どうして僕以外は、自由に動けているのだろう?自分の脚で立って、歩いて、手を動かして物を掴む事ができるんだろう?僕は指の一本すら、思った通りに動かせないのに。 そんな疑問ばかりが浮かんで、苛立ちは募って、けれどそれを発散する事も出来なかった。僕はもう動けないし、話せない。生きている気がしなかった。
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