0

1/8
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ

0

6時15分、この時間に放送されているニュース番組は全国ニュースから地方ニュースに切り替わった。この中京都では昔までは6時15分になれば全国ニュースから東海地方のニュースに切り替わっていたのだが首都移転によって東海地方のニュースは首都圏のニュースに名前が変わっていた。 この中京都テレビも首都移転以前は地元のグルメがどうだの、デパ地下がどうだの、地元の動物園がどうだの、地元の野球チームを贔屓目でしか見ることができないない提灯レポートだの、月下美人の花が咲いただの、机洗いがどうだのと言った毎年毎年同じ地元密着ニュースを流していたのだが、首都圏のニュースになってからは続々と東京から拠点を中京都に移した芸能人達を起用したレポートコーナーと化していた。 そんな中、ディレクター井口慶次郎(いぐち けいじろう)はやっと自分の企画が通った事に大満足し、心を燃やし張り切っていた。 「10秒前、入ります」 タイムキーパーが10秒前をディレクター井口慶次郎に通告した。井口慶次郎は画面に映る二人をじっと眺める。 「はい5秒前…… 4、3、2、1」 「キュー!」 井口慶次郎がキューのサインを出す。先程まで全国のニュースを報道していたアナウンサーが映し出された。 「本日からの新コーナー、地元の同級生二人」 「この東海地方出身の有名人の同級生二人による対談形式のコーナー、楽しみですね」 「本日初めての地元の同級生お二人はこちら!」 アナウンサーの隣には参道求が座っていた。 「小説は累計3000万部突破、数々の原作はドラマ化すれば大ヒット、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い、参道求先生です」 「本日はよろしくお願い致します」 参道求はペコリと座ったまま礼をした。これまで数多の賞を貰っているためにカメラの前に立つことは少なくはなかったが緊張するのは変わらない。 「参道先生の作品はこの局でいくつもドラマ化されております」 「ありがたい限りです」 参道求は照れくさそうにカメラに向かって礼をした。 「それではもう一人の同級生を紹介させていただきます、政界のジャンヌダルク! 地元愛、中京ファースト! 戦う女性の象徴! 若き文科政務官 大室あずき議員です」 「よろしくおねがいします」 大室あずきは目を閉じたまま礼をした。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!