お供えの花

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 通ってた小学校の近くの交差点で起きた大事故。  何人もの人が亡くなって、盛大に供養の儀式が執り行われた。  その際、近くの小学校の児童たちからも追悼をしてほしいと言われたらしく、児童はめいめい何らかの花を持ち寄るよう言い渡された。  豪勢な花束を持ってきた奴がいるかと思えば、いかにも追悼らしい、ひっそりとした一輪の花を持ってきた奴もいる。中には造花の奴もいたな。  ちなみに俺は人と差をつけたい気持ちが強く、考えた結果、鉢植えを持って行った。  児童自身が選び、持ち寄った花だからという理由で、総てOKになったけれど、俺とか造花の奴とか、本当は止められてしかるべきだったと思う。  というか、あれは親なり教師なりが絶対やめさせるべきだったと、今になって本気で思う。  大事故以来、いまだに事故が多発する交差点。そこを通るたび、恨めしそうな顔の男が俺を睨む。たまたま造花を送った奴とそこを一緒に通った時は、別の男がもう一人現れて、二人で俺達を睨んでいた。  お互い話して判ったけれど、ここを通るとそれぞれが見ている幽霊は必ず現れるらしい。  原因はすぐに察することができた。  造花と鉢植え。理由は判らないけれど、俺達があれを持って行ったせいで、この両名はいまだに成仏できてないらしい。  元々事故の起こりやすい交差点なのか。はたまた、幽霊達の負の念がさらなる事故を呼び起こしているのか。  そいつとは話し合い、毎年大事故のあった日には、今度こそきちんとした成果を交差点にお供えしているけれど、いまだに幽霊達は成仏する様子もない。  これは本当に俺達のせいなのか?  あと何年、俺達はここに花を備え続ければいいんだ?  その答えは出ないまま、今年も、俺とそいつは、交差点に供える花を選んでいる。 お供えの花…完
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!