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「班て、四~六人で組むことになってたじゃん。いま俺と、剛田と、原で三人なんだよね。仁木が入れば四人になるじゃん」
剛田と、原は、小山田が特に気が合うらしい二人だ。剛田と原は、小山田と幼少から一緒で、やはり筋金入りの内部生らしい。
その班に人数が足りないなら、入りたいクラスメイトなんていくらでもいるんじゃないだろうか?
「あ……」
そうか。小山田は修学旅行委員だから。
たぶん、初めから訊かなくったって、俺がどの班に入れていないのも分かっていたに違いない。
小山田らしい生真面目さと責任感で、こうして俺をどこかの班に入れさせようとしたんだ。
はみ出ている人間を放っておけなくて、何とか輪の中に入れようとしたんだ。
なるべく俺に気付かせないようにして。
「うん――じゃあ、それで……」
「本当に? 良かったァ――断られるかもって思ってた」
「小山田を断るやつなんか、いないでしょ」
「えっ、何? 俺すっげぇ評価いいじゃん!」
弾むようにそう言う端正な横顔が、年相応の元気さと健康さと見せていて、ふっと見惚れてしまう。
小山田を安心させるように話した。
「俺を入れておいてくれたら、数合わせになると思うから」
「数――何?」
「修学旅行先で、剛田と原と三人で行動できると思うから」
「えっ、いやいや、仁木も一緒だって。どういうこと?」
慌てたように、表情豊かな目は丸くなって、素直な驚きが顔に浮かんでいた。
「いや、俺がいたら邪魔だろ? 剛田と原にも了解とったわけじゃないし――」
「あ、そんなこと? 剛田と原には、仁木があいてたら入れるよって言ってあるよ、もう。二人とも仁木には興味あるから、必ず入れて来いって」
くっくっと鳩のようにいたずらに笑う小山田の端正な顔を、思わず見直した。
「は?」
「だって仁木って謎が多いじゃん。群れなくて平気、予備校なしで成績上位、クールで冷静、体育できんのにプールだけ休んでる、女子ネタに乗らない。それを三人で暴く!ってことになってる」
くすくすと笑うその顔から視線を反らして、俺はふっと呟いた。
「いや、行かないんだ。修学旅行」
「えッ?」
小山田は心底ビックリしたらしく、くっきりした目を大きく開いて、ただ俺を見返していた。
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