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今この傷だらけ体を、ライラ様になんと説明しよう。
――白髪の薬を求めて薬屋に行ったら、薬屋のじいさんに「お前は人間じゃない、不老不死の薬だ」と言われて命狙われた――
と、そのまま言うのはためらわれた。僕自身、自分の身に起きたことを受け入れきれていなかった。そんなことをライラ様に言っていいものだろうか。
それにライラ様は、僕が以前刺されたのを目撃したとき、かなりショックを受けていた。いきなりこんな怪我を見せたら、またショックを与えかねない。
ここからなら、ライラ様の屋敷より医院の方が近い。
「ライラ様、手当をしてもらったら、すぐ帰りますからね」
だから、少し待っていてください。ライラ様。
僕は医院に向かった。
「カイル、またどうしたんじゃ、その怪我」
僕の怪我を見た医者は驚いていた。この医者は、僕が以前から世話になっている。ライラ様のストーカーに刺されたときも驚いていたが、今回の怪我にも驚いたようだ。この町は普段平和だから、こういう事件沙汰の怪我の患者は珍しいのだと思う。
「ちょっと変な人に絡まれてしまって……」
「何があったらこんなことされるんじゃ。まあいい、手当してやるからそこに座りなさい」
僕は医者に頭の怪我と手の火傷の手当をしてもらった。頭と両手は薬を塗られたあと、包帯でぐるぐる巻きにされる。
熱い液体に体を漬けられていたから全身火傷しているかと思ったが、脱出するのが早かったのか、体はさほど火傷していなかった。まだ肌は赤いし痛いけれど。とにかく思っていたより軽症で少しホッとした。
「とはいえ、お前もよくここまで歩いてきたな。この間刺されたときもそうじゃったが、丈夫な体をしとるの。人間とは思えんほどじゃ」
医者の言葉に少しどきりとした。ここの医者に世話になる度に、「人間離れした丈夫さ」とは言われていた。今までは、ただ丈夫であることを褒められているだけだとなんとも思っていなかったのに。
僕が丈夫なのは、人間じゃないから?
人間じゃないとすれば、僕はどうしたらいいのだろう。
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