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第5話 人間
「あのじじい、何者なんだ」
じいさんがいなくなった建物の中で、僕は一人ぼやいた。体中痛かったが、怒りで頭に血がのぼっていたから少し紛れていた。なんとか動ける。
僕は周りを見渡した。もう外が暗いようで、窓からはほとんど光が入らず、暗くて周りがよく見えない。部屋の隅には見たことがない植物の鉢植えが並んでいて、その横に本棚があった。
この本はじいさんの持ち物だ。さっきじいさんが言っていた不老不死の薬のこと、少しわかるだろうか。僕は本棚から本を抜き出して、中を見てみた。ずっしり重く分厚い本で、今の僕には持つのも辛い。暗い部屋で目を凝らし、文字を読み取ろうとしたけれど、全然読めない。僕が見たこともない文字しか書かれていなくて、さっぱりわからなかった。
「くそ……」
ここにいつまでもいられない。じいさんの薬屋なのだから、しばらくしたらじいさんが帰ってくるだろう。鉢合わせたらまた命を狙われる。一旦ここを出よう。
外はもうすっかり暗かった。早く帰らないとライラ様が怒ってしまう。僕は慌ててライラ様の屋敷に走ろうとしたが、ふと立ち止まってしまった。
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