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「やあ、解決したよーであるな」
アシタルが領主親子から感謝を伝えられて……それも一段落した頃に、正面玄関から堂々とフランシス司祭が現れた。
「アシタル君、お疲れ様。ローランド君も護衛お疲れ。ヴィクター君とエルドレッド君はこれから仲良くね。……さて」
フランシスはアシタルの肩をぐいっと抱き寄せながら、ヴィクターを見やる。
「アシタル君の力については御覧いただいたことだろう。というわけでねヴィクター君、特例ってなるけど、この子にヒーラー許可証を発行してあげてよ」
「ああ。……いや待てなんだと? その子、無免許ッ……」
「無免許です、ハイ……」
領主に二度見され、エヘ、と気まずい笑みを浮かべるアシタル。「まあまあまあ」とフランシスは彼女の肩を叩く。
「名目上は、神聖魔法も使えるローランド君の治療補助ってことで、不正はなかった。オーケー?」
「なんだか凄いゴリ押しですな……」
まあ構いませんが、と渋い声をするローランド。ここでアシタルが不正をしたと糾弾しても、誰も幸せにならないのは事実ではある。
領主は咳払いを一つした。
「……ヒーラー許可証だな、承った。実際、今後その神の腕を使って治療していくのであれば許可証は必須だろう。その力は大いに奮われるべきだ」
「……! 領主様、ありがとうございます!」
アシタルは深く領主に頭を下げた。
「礼を言うのはこちらの方だ。本当に……ありがとう。天の御柱様にも感謝を。それから、」
ヴィクターは言葉を続けた。
「天の御柱様の信仰復活及び知名度向上の為に、領主として全面的に協力しよう。……都市の老朽化や星落ち災害で、人口や資金が減少していることは随分と悩みの種でね」
後半は苦い声で、領主は額を押さえた。
「んじゃ、パーッと町興しすれば皆ハッピーってことなんだな」
話を聴いていたエルドレッドがふむふむと頷く。そのまま彼はしばし考え込むと……
「俺に良い考えがある。ちょっと急いで企画まとめるからさ、時間ちょうだい! まとまったら後日持ってくから! よろしく!!」
言うが早いか、エルドレッドは自室へと駆け出して――数歩のところで止まって振り返って。
「アシタルちゃん! 改めて言うけどさ!」
「は、はい? 何でしょうか!」
「君ってやっぱり美人だったね! またデートしよ!」
これまで数々のレディやマダムをキルしてきた、麗しのウインク。
華やかなる貴公子は、心まで華やかになった足取りのまま、踵を返していった。
「……か、顔が良いって怖い……」
アシタルは呆然としつつ呟いた。自分の顔の良さを自覚した上での行動なので尚更タチが悪い。領主も「うちの息子がすまない……」と遠い目をしている。
「おデートされるならちゃんと門限は守って下さいね」
ローランドの声が、良心的に響いた。
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