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「ぅ、うー……ん、」
頭がぐらぐらする。
曖昧な意識の中、アシタルは目を覚ました。
「あ、れ……私……」
星が落ちてきて、神様に会って……生き返らせてもらって?
「……――なにこれ」
自分の体を見て、アシタルは絶句した。
落ちてきた星は小粒だった。なれど、アシタルの腹部に巨大な穴を空けるには十二分以上の破壊力を持っていたのだ。
――どくどくと溢れ出す血、真っ赤に染まった自分の体。
自覚の直後、アシタルを襲ったのは想像を絶する激痛だ。
「うあぁああああああああああああああああああッッッ!!?」
アシタルは血や傷を見るのが苦手だった。このことがヒーラー適性がないことに拍車をかけていて――今の状況を一言で表せば、アシタルはパニックに陥ってしまっていた。
『アシタル、右手を! 天の御柱様の腕の力を!』
そんな時に聞こえたのは、きゅーきゅーという小動物の声――しかし、その意味を不思議とアシタルは理解できていた。
倒れたアシタルの体の上に、銀の毛をした子竜がいる。それはアシタルの右腕の袖を噛んで、ぐいぐいと引っ張っている。
この子の名前は――そうだ、モルトゥ。
(そうだ……私は……!)
『アシタル、はやく! 死んじゃうよ!』
「うんッ――やって、みる……ッ!」
アシタルは奥歯を噛み締めると、自分の右掌で傷に触れた。
すると、だ。
一瞬で、あれだけの激痛が――消えた。
「はぁっ……はぁっ……」
息を弾ませたアシタルの視線の先。
惨状を晒していたお腹の穴は綺麗になくなっており、丸く破れてしまった服と、そこに染み付いた血が、負傷していたことを物語るのみだ。
「ほ、本当に……治った……」
アシタルは呆然としながら、自分の右掌をおそるおそる見た。
そこについているのは、傷口に触れた為についた真っ赤な血。
……血。
「うッ!!」
繰り返すが、アシタルは血がダメである。
料理中に包丁で指先を切るだけで意識が遠くなるほどである。
注射を直視できないタイプである。
いくら傷が治ったとはいえ……
さっき見た大惨事に、今もなお自分にベッタリ付いた血に。
アシタルはガクリと気を失ってしまうのであった。
暗転、三度目。
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