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死んでいた口橋という男は、一年に四億も五億も稼ぐ営業マンだった。殉職する刑事役が似合う俳優のような美男で、小賢しく、賄賂やらそのほかのよくある汚いやり方で金を集める男だった。思い上がっていて、敵も多かったが、妙に男臭い色気があって女には困らなかった。
それなのに麻雪が入社してしばらくすると、異様なほどにまとわりつくようになった。
「数ヵ月ほど前から、この辺りを肝を抜かれたように昼間でもうろうろするようになったから、近隣の住民から二度、通報があった。その後失踪し、一ヶ月前に、鏡町の資材置き場のボンゴの中で死体で見つかった」
刑事はカーブミラーのある細い小道を指差した。
「その曲がりくねった道をひたすら行くと鏡町に着く。町外れの潰れた床屋の主に目撃されたのが、最後だ」
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