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閉園の音楽が鳴った。俺は大きな肩をたわめて出口へ向かった。象たちの巨大な影と自分の影が重なった。もう空は殆ど夜になっていた。
潮気にまみれた清風荘に戻ると部屋に明かりがついていた。希絵が居るのだ。
俺は部屋には戻らず、その旅館の下にこしらえられた船場の漁船の屍に忍び込み、凍てつく星々にまみれて眠った。
そうして、次の日も同じことを繰り返した。
──そんな風に、俺は工事契約書のままにツルハシを持ち、無人の家を修理しつづけている。
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