真逆の熱

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   殺された口橋の死因は病死に変わっていた。つまり何らかの力が働いたのだ。  生臭い醜さがこの村の底では、音もなく流れている。  法よりも、正義よりも、強者の秩序がもっとも重要なのだ。  資材を並べているヤードまでの砂利道で立ち止まり、独りごちた。 「たしか繋留柱卸業の社長の父親は、もと警察官だと言っていた」  ずいぶん老いていたが、体が角ばりいやにデカい手をした男だった。険のある目は真っ黒で、手にはいくつも傷が走っていた。威嚇することに手慣れたジジイで、闘犬場によく出入りしていた。  
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