真逆の熱

17/17
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
   錆びた蝶番を鳴らし、B棟に入りかけた時、平島が後ろで大声をあげた。 「義烏(イーウー)行きのコンテナの中を見るなよ! タカムロ商事の社長より、ヤバい奴が絡んでいるんだから」  ふり返って訊く。 「ヤバい奴って?」 「──犬迫って男だ。洒落にならない」  俺は熱波色の砂を蹴って脇によけ、訊いた。 「どんな風に?」  すると平島は顔を土気色にし、口を閉ざした。  俺は胸板を静かに上下させ、目を細めてキナ臭いコンテナに散らばるまだらの光を眺めた。  それから、ゆっくりと内部に入った。  砕けたチェインスタンドを跨いで、顔をゆがめ、麻雪の家に設置する緑の外灯を肩に担ぐ。  
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!