65人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
錆びた蝶番を鳴らし、B棟に入りかけた時、平島が後ろで大声をあげた。
「義烏行きのコンテナの中を見るなよ! タカムロ商事の社長より、ヤバい奴が絡んでいるんだから」
ふり返って訊く。
「ヤバい奴って?」
「──犬迫って男だ。洒落にならない」
俺は熱波色の砂を蹴って脇によけ、訊いた。
「どんな風に?」
すると平島は顔を土気色にし、口を閉ざした。
俺は胸板を静かに上下させ、目を細めてキナ臭いコンテナに散らばるまだらの光を眺めた。
それから、ゆっくりと内部に入った。
砕けたチェインスタンドを跨いで、顔をゆがめ、麻雪の家に設置する緑の外灯を肩に担ぐ。
最初のコメントを投稿しよう!