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夜にだけ動く心臓
早朝、ごそりとホテルのベッドから抜け出し、鯨色の洞のような飲み屋街を海洋に向かって歩いた。
朝になると決まって屍と化す路のあちこちに、ヘドとコインと花束が落ちている。鳥たちが嘴をとがらせ、何かの周りを取り囲んでいた。
俺は静かに足を運びながら、心音に耳を澄ました。
罰について考えるときは、いつも特有の動力を感じる。
夜にだけ動く心臓に似ている。
そうして目玉の嵌り込んだ骨を鈍く光らせ歩きながら、黒くて青い港を目指した。
フェリー埠頭の車両架道橋の上には、白いカモメの群れが旋回していた。
遠くのコンテナターミナルには砂が詰まれ、ツインスプレッダが聳えている。
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